初めて肌を許したのは、高校に入ってすぐの頃だったか。相手の顔も名前も、今となっては思い出せない。熱心に誘われて、好奇心から応じた関係だ。男子校という若い男ばかりの閉塞された環境で、凛とした容姿の和桜は偶像として崇拝され、性愛の対象として熱い視線を送られていた。だから、和桜がその気になれば、体の快感を得る相手には事欠かなかった。

関係に応じた相手にはそれなりに好意を感じていたし、相手から大事に扱われるのに悪い気はしなかったが、どこか心は満たされなかった。
初めての時も、2人目も3人目以降も、こんなもんかと、冷めた目で見ている自分がいた。

しかし、今は違う。
「う」
手が震えて、ボタンがうまくはずせない。優もそうだ。性急に和桜のシャツをたくし上げて、胸をあらわにすると、まだやわらかい突起にむしゃぶりつく。
鋭い痛みのあとから、甘い痺れが広がる。

胸の突起を吸われながら、自分に跨った優のスーツのボタンと格闘し、剥いでベッドの下に放る。髪に指をさしこんで、滅茶苦茶にまさぐる。背中、わき腹、太もも、ヒザ。手の届く範囲にある優には、全て触れる。

「う、んっ」
吸われていた突起に、歯をたてられる。それでも手の動きをとめない。
「和桜」
手を掴まれる。
「ええから。大人しく、されとき」

体を起こして、ヒザで和桜の手を封じて、優はすでに形の崩れたネクタイを指で緩める。高い音がたつほど激しく抜いて、放る。ワイシャツもちぎれる程の勢いでボタンをはずして、脱いで放る。ベルトに指をかける勝に、
「僕が」
腕を伸ばそうとする。が、優は許さない。

「ホンマはな」
両手を和桜の肩に置く。
「和桜をもっと、ゆっくり、じっくり、味わいたい。せやけど」
腰を押しつける。優の中心は、すでに大きく変化しているのが分かる。
「そんな余裕、ないねん」

こすりつける。和桜の中心もまた、興奮を隠しきれない状態になっている。
「おまえも、そうやろ?」
「あ」
声が漏れる。

「早(は)よ、見せて。俺に、全て」
半端にたくし上げられていたシャツを脱がされ、パンツも下着ごと脱がされる。腰を上げて協力するが、力任せに脱がされて片方だけ靴下が残る。

「ああ」
嘆息ともとれる熱いため息が、優の口から漏れる。
興奮と喜びとで桜色に染まった肌を優に見られている。優の目に欲望に正直な体がさらされているのが恥ずかしくて、和桜は目をつぶり手で顔を覆って、ヒザをきつく閉じる。

「キレイや」
つぶやいて、閉じられたままのヒザに口づける。口づけを下げて、スネから足首まで。片方残った靴下を脱がして、指先に口づける。
「あ」
抗うが、力では優にかなわない。足首を掴んで、優は親指を口に含み指の間に舌を這わせる。
「イヤッ」

くすぐったさと同時に、ゾクゾクとした良さが背筋をかけ上がる。ヒザが緩んだところを、ゆっくり左右に開かれる。
そこには、やわらかな下草を押しあげて力強く変化した和桜自身がある。ヘソまで反り返って、わなないている。

「ん」
最も快感に敏感な部分が、熱く湿った何かに覆われる。うすく目を開けてみれば、優が自分自身を口に含んでいる。
「あ、アカン」
先端部を強く吸われる。手で口で舌で、リズミカルに刺激され、すぐにでも頂点に達しそうだ。

和桜は背中を反らせ、足先に力を入れる。気を抜くと、本当に達してしまいそうだ。優の肩に手を置いて、強く掴む。
「ウシロ、ええ?」
顔を上げた優に訊かれる。その口元は、だ液と先走りとで濡れている。和桜が目で頷けば、背中に手を挿しいれて、簡単に反転する。腰を手で持ってヒザを立たせると、大きく左右に割る。

ベルトを緩める音、ジッパーを下げる音のあと、熱いかたまりがまだ固いすぼまりに押しつけられる。
「んっ」
いくら和桜でもいきなりは無理だ。肩ごしに後ろを見る。
白い尻を高く掲げた自分の姿が、自分でも扇情的だ。眉を寄せて息を弾ませて、ヒザまでパンツと下着を下げた半端な状態で、張り詰めた雄を持って押し込もうとしている優の姿は、もっと扇情的だ。

「ハッ」
息を吐く。深く何度も吐く。優と早くひとつになりたい。優の熱い想いを、全て受け入れたい。
「あ」
入って、くる。ゆっくり確実に、狭い腸壁を押し広げて、優が入ってくる。

「和桜」
全てを呑みこむ。いっぱいに広がったソコは悲鳴をあげている。
「動いて、ええ?」
「う…ん」
答えたとたん、揺すられる。

「あ、カンニン。も、イきそ」
「僕…僕も」
「アカン。ホンマ、も、スゴっ」
「あ、あっ」
枕に顔を押しつける。滅茶苦茶にかき回されて、口を開いて呼吸を忘れる。眉を寄せて、その瞬間に集中する。

先に、和桜が頂点を迎える。何度にも分けて射出された飛沫は、優の手を濡らしシーツに散る。優もすぐに、和桜の体の一番奥に射出する。
「ハァハァ」
「ハァ…」
射出の余韻に体が震える。呼吸をようやく思い出して、酸素をむさぼる。

「ああ」
背中が熱い優の体を受け止める。そのまま二人重なって、ベッドにうつ伏せになる。
「和桜」
呼ばれて、耳朶に口づけられる。細かく汗をかいた首筋に、背中に口づけられる。

「んっ」
体中が敏感になっている。優の息を感じるだけで、体が反応する。嬉しいが、つらい。
和桜はゆっくり体を反転して、仰向けになる。唇に口づけられる。さっきまでの、むさぼるような口づけではなく、いとおしみ慈しむような、優しい口づけだ。
和桜もそれに応える。優の背中に腕をまわし、抱きしめる。裸の胸と胸とがピッタリ合わさって、呼吸も鼓動も、気持ちも共有する。

「重ない?」
「うん」
「ちょお、待ってて」
額に口づけて、いったん体を離す。ひどい格好やと言いながら、ヒザまで半端に脱いでいたパンツと下着を脱いで、再び和桜を抱きしめる。

「かんにんな。がっついてしもて」
本当にすまなさそうな顔をする優に、小さく首を振る。お互いに楽しむ余裕はなかったが、それだけ強く求められていると分かって、余計に嬉しかった。
「さっき、玄関でおまえに抱きしめられたら、ガマンでけへんかった」
言って、低く笑う。

「冷静で慎重な和桜が、あない取り乱したトコ、初めて見たわ」
「それは、おまえが悪い」
「ん? 俺が?」
並んで横になる。和桜の頭の下に腕を差しいれて、腕枕してくれる。

「せや。弓道の練習には来ん。携帯にも出えへん。ごっつい心配やったんや」
「せやな」
大げさとも言える和桜の心配の原因は、藤枝の死因にある。優にはそれが分かっている。
「かんにん、心配かけて」
だから、安心させるように和桜の額に口づける。

「けど、嬉しかった」
「なに言うてんね」
あらためて言われると、どういう顔をしていいか分からない。横を向こうとするが、アゴをとられて口づけられる。
「ホンマに」

もう一度。
「心配してくれて、おおきに」
口を開いて、舌を探る。
「抱きしめてくれて、キスさせてくれて」
舌を絡めて。

「今度は、もっとじっくり、おまえを味わいたい」
囁いて、和桜の手を取って自分自身へ導く。さっき射出を終えたばかりのソコは、再び大きく変化している。
「おまえの全てに、俺を刻みつけたい。気が狂う程、喘がせて、イカせて、グシャグシャになって、ひとつに溶けあって」
「あ…」
耳から、甘い痺れが全身に広がる。呼吸が、心臓の鼓動が、早くなる。

「和桜が、欲し…ええか?」
「はい」
いとしい優に激しく求められて、幸せで嬉しくて、和桜は小さく頷くのが精一杯だった。




  2014.05.21(水)


    
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