琰が小屋に帰り着いたのは、夜九ツ(=深夜0時)すぎだ。
寝ている丈吉を起こさないよう、そっと中にはいり、水をくんで飲む。帯を解いて上衣を脱いで、
そのまま布団にもぐりこむ。

「琰、帰ったんか?」
「あ、起こしたか?」
低い声で呼ばれる。闇に慣れた目で見れば、丈吉はこちらを向いて寝ている。
「かんにんな」

「大丈夫や。…疲れたか?」
「平気や」
「ほうか」
半覚醒の声で言って、腕を伸ばしてくる。琰が丈吉の左肩に頭をあずけると、すぐに肩を抱かれる。
「早よ寝ぇ」
「うん」
素直に頷いて、目を閉じる。ほどなくして丈吉の寝息が聞こえるが、琰はなかなか寝つけない。

今夜はいろんなことがあった。
惣一郎にとうとう笑顔を見せたことや、気が強いばかりと思っていたあや菊の、哀しい部分を垣間
見たこと、それに林と名乗る武士から文を預かったこと。
特に、あや菊の哀しみに少しだけ触れたことが、頭から離れない。

「どないした?」
と、寝ているとばかり思っていた丈吉が訊いてくる。
「寝れんのか?」
「う…ん」
目を上げれば、すぐ側に丈吉の横顔がある。

肘をついて身をおこし、丈吉の顔を見る。目を閉じて、薄く口を開いている。
琰は親指の腹で丈吉の唇をなぞると、ゆっくり、自分の唇を重ねる。何度も重ねて、下唇を軽く噛む。
「ん…」
よく眠れるおまじないにと始めたこの行為も、だんだん熱を帯びてくる。丈吉の衿の合わせ目から
手をいれ、広い胸をまさぐる。そして、まだ柔らかな突起に指先で触れる。

「んっ」
一瞬、丈吉は顔をしかめたようだが、かまわない。
琰は指先で触れた突起に、今度は舌を這わせる。
豆粒ほどもない突起は、琰の舌に嬲られ、吸われて、小さな芯を持つ。その変化を楽しんで、舌を
尖らせ胸の彫り物をなぞる。

丈吉が裏の世界で”毘沙門天”と呼ばれる所以(ゆえん)の、毘沙門天の梵字だ。手のひらに隠れる
大きさで左胸に彫られたそれを、琰は丁寧に舌でなぞる。
「…あっ」
とうとう、丈吉は声を出す。

「たまらんように、なった?」
上目づかいに、意地悪く訊く。丈吉は口元を手で押さえて、小さく首を振る。
「ええわ。もう訊かんし」
手馴れた調子で帯を解き、下帯の上に手を置く。
「コッチに訊いたる。コッチの丈さんは、いつかて正直や」

胸の突起を吸いながら、やわらかく下帯の上からもみしだけば、ゆっくりと変化し始める。
「フフ…」
下帯の紐を解いて、開放してやる。琰は髪をかき上げ、半ば頭をもたげた丈吉を口に含む。先端
部をチョロチョロ舌先で刺激したり、ぷっくり張ったカリ先を唇にひっかけるようにして何度も出し
入れするうちに、大きく熱く怒張する。

「丈さん、俺にも…」
口元を押さえていた丈吉の手をとり、中指を丁寧に舐めあげる。充分に濡らした指を、琰は自分の
後庭にあてがう。
「く、う」
指はほとんど抵抗なく、中ほどまでのみ込まれる。だが、ヒザをついたこの姿勢では、それ以上は
無理だ。

「琰、こっちに」
かすれた声で呼ばれ、琰は腕を引かれてあお向けに寝かされる。すぐに、丈吉の熱い体が重なって
くる。唇が重ねられ、舌を探られ、強く吸われる。
その間に手は下へ。大きくヒザを割られ、その奥の後庭に指よりも太く熱い丈吉があてがわれた
瞬間、
「う…んんっ」
入ってくる。充分に慣らされていなかったソコは、ギチギチと丈吉の侵入を拒もうとする。

「まだ、キツかったか?」
「大丈夫や、さかい、来て」
「けど」
「ええねん。丈さんになら、酷くされても、ええ。せやから、早よっ」
「ん…」

いくら琰がねだっても、丈吉は琰を傷つけるようなことはしない。今も、琰の身体が慣れるのを
待っている。
唇を重ね、髪をかき上げ、耳を吸い、首筋を吸い。
丈吉の指は痛みに萎縮した琰にからみつき、上下に扱きはじめる。
「はぁ…あっ」

丈吉の巧みな指の動きに、琰自身は大きく変化していく。これ以上ないほど怒張した先端からは、
透明な液体がにじみ出ている。
「い、も、来て…」
ゆっくりと琰の身体は開いていく。丈吉は琰の顔を見ながら、腰を進める。

「あ、あぁ」
太い丈吉を、全部のみ込む。耳元で息を吐けば、ようやく遠慮がちに、しだいに激しく腰を使い
始める。
「丈さん、スゴ…い」
「う、う、く」
「も、アカン。も、あ、いや、いやや、アカン」
「う、あっ!」
「丈さんっ!」

その瞬間、身体の一番奥で丈吉を受け止める。何度も何度も、打ち出される丈吉の熱を感じ
ながら、琰は自分もまた丈吉の指を濡らしていた。




  2011.11.19(土)


    
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